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カウンセリング3つの効果


抜粋 カウンセリングに行こう
サンマーク出版 著者TMA所長武藤清栄

   心を洗い流すカタルシス効果
まずカウンセルングは、「リスニング」から始まります。
相手をそのまま、丸ごと受け入れて「話を聴く」ということです。
根掘り葉掘り聞いたり、特定の結論に誘導したりはしません。批判も説教もしないで、そのまま受け止めます。ですから、ありのままを話すことができます。
このありのままを話せるということが、たいへん大きな意味を持っています。なぜなら、私たちは、ありのままを大切に受け止めてもらう体験を日常生活の中でなかなかできないからです。
例えをあげてみましょう。
もしあなたが妻に「会社を辞めたい」と言ったとします。返ってくる言葉は、たぶん「え、どうして?」とか「何を言っているのよ。この不況のときに」「私だってがんばっているんだから」「不満のない人なんていないのよ」ではないのでしょうか。
あるいは同僚に「妻とうまくいかない」と言えば返事は、「あんなにいい奥さんなのに。いったい何が不満なんだ?」だったりします。こうした対応がかえってくれば、心の中にあるものを吐き出せず、口ごもってしまうことになりがちです。
カウンセリングでは、相談者の話を非難も批判もせず、丸ごと受け止めて、耳を傾けます。不安やイライラ、怒りや憎しみといったマイナスの感情も、そのまま受け止めてくれるのです。ですから、ありのままを話すことができるのです。ありのままを話せることによって、心の中にあった緊張や不安が取り除かれ、心身がリラックスします。これがカウンセリングの一つの効果、「カタルシス効果」を呼び起こすのです。
カタルシスとは「浄化」という意味です。これは、心の中によどんでいるものを洗い流してさっぱりさせること、風通しをよくすることだと理解してください。カウンセリングでは、心の内にあるさまざまな思い−不安やイライラ、苦悩や怒りといった感情も吐き出すことができるのです。これまでため込んでおいたストレスを外に出すことによって、カタルシス効果が生じ、やすらぎと癒しが得られるのです。

   共感によって得られるバディ効果
カウンセラーは相談者(専門用語では「クライアント」と呼びます)の気持ちや考えを理解し、分かち合おうとします。たてまえで応じたり、他人と比較・評価したり、逃げ腰になったりせず、相手と向かい合って話を聴きます。
たとえば、「死にたい」「殺してやりたい」と思うクライアントが訴えても、「死にたいと言いたいくらい、つらいんでしょうね」「殺してやりたいと思うくらい憎いんでしょうね」と、その裏にある気持ちを聴き、それを理解しようとします。
こうしてクライアントの気持ちに寄り添います。つまり共感するのです。この「共感」によって2つ目の効果、「バディ効果」が得られます。バディというのは、エイズ患者の集まりや、さまざまなグループ療法から出てきた言葉で、仲間という意味です。
人は仲間を得ることで、安心感を手にすることができます。バディ効果とはつまり安心感を得られるということです。
たとえば、悩みを持った子は、親や教師に相談せずに、同じような境遇の者同士で話をする傾向があります。親や教師に相談するより、ずっと楽だからです。
おとなの場合も同じでしょう。たとえば、恋人がいないという悩みを持つ人は、恋人がいる友人には悩みを打ち明けにくいのではないでしょうか。「こんな悩みは、分かってもらえないのではないか」「話しても、バカにされるだけじゃないか」と恐れて、同じように恋人のいない友人に相談したりします。
喜びは分かちあえることによって2倍になり、悲しみは分かちあえることによって半分になるといわれています。不安や葛藤は、自分だけで背負い込むより、それを2人で分かちあえば、ずっと楽になります。3人で分かち合うことができればもっと楽になります。同じ苦しみや悩みを抱えながら、ともに歩いていく人が得られれば、それは安心ややすらぎにつながっていくのです。また、生きていく力や元気も得られるでしょう。
カウンセラーは、クライアントを丸ごと受け入れ、クライアントと同じ立場に立って受け止めてくれます。ですから、バディ効果が得られ、クヨクヨしたり不安だった心にも安心感が生まれ、少し元気が出てくるのです。

   自分の潜在意識に気づくアウェアネス効果
3つめの効果に、「アウェアネス効果」があります。これは、「気づき」です。精神分析でいえば、洞察ということもできます。気づきには、目が覚めて意識を取り戻すとか、つまづいて初めて、そこに石があったことに気がつくというような外界やものごとへの「気づき」もありますが、カウンセリングでいう「気づき」とは、自分の感じ方や考え方など今まで無意識だった自分の内なる部分にハッと気がつくことです。
私たちの心は、自分がなんとなく知りたくないこと、あるいは気がつきたくないことを知らず知らずのうちに心の奥底に押し込めてしまう傾向があります。ふたをして潜在化させ、見えないようにするわけです。しかし、悩みを乗り越えるためには、なぜそうなったのか原因を知ることが大事で、潜在化させているものに自分自身が気づくことが必要なのです。自分自身がそれを知り、理解することができないと、本当の意味で自由にはなれません。
とはいえ、これは簡単にはできません。なぜなら潜在化したものは自分が気がつきたくないことが多いからです。
ところがカウンセラーに自分がありのまま受け入れられることによって、だんだん自分自身にも深く耳を傾けることができるようになります。いままで抑えこみ心の秘めていた感情を安心して、自由に解放、表現できるようになるからです。ですから、今まで隠れていた自分に気づくことができるのです。それはとりもなおさず自分自身からの解放なのです。
アウェアネス効果を得て、私たちが自分のほんとうの姿に向き合うとき、そしてその姿を自分が受け入れることができたとき、私たちは初めて自分を肯定することができるようになります。そして自分のほんとうの姿に立ち戻れたとき、現実に立ち向かう勇気も湧いてくるのです。
 
代表的なカウンセリング方法

  • 来談者中心療法(すべてを受け入れて聴く)
    現在、日本で行われているカウンセリングの主流を占めている方法です。
    1950年代初頭に、日本に初めて入ってきたカウンセリングで、アメリカのカールロジャーズによって始められ、その後様々な人たちによって発展されてきました。
    ロジャーズは、それまでのカウンセリング法――つまり原因を突き止め、処方と指示を出すやり方に疑問を持ち、「人は成長する力、自己実現していく力を内に秘めている」ことを前提に、それまでと異なるカウンセリング方法をあみ出したのです。
    それはどういうものかといいますと――。
    人が潜在的にもっている「成長する力」「自己実現する力」は、さまざまな障害によってその力を発揮できない状態におかれているというのです。この潜在能力を十分に発揮できるように援助していくプロセスなのです。
    カウンセラーは何よりクライアントの内的世界を大事にします。訴えている苦しさについて、なぜそうなったか、どの程度に苦しいのかなど、外側からアプローチはせずにクライアントの気持ちにできるだけ沿って理解しようとします。
    たとえば次のような例があります。

    クライアント
    「最近、家に帰るのが怖いんです。帰ろうとするのですが、家に近づくと気が重くなって冷や汗が出てくるのです。同気がして帰るに帰れず、ホテルに泊まった日もあるくらいです。」

    カウンセラー
    「家に帰ろう、帰りたいと思っても、からだが拒否反応を示してしまうわけですね。」

    クライアント
    「もともと帰宅時間は遅かったのです。仕事は増える一方で、残業が続く毎日でした。」

    カウンセラー
    「それはお疲れでしたでしょうね。」

    クライアント
    「実は、中3の息子が不登校になってしまい、ときには暴力をふるうことさえあります。妻は、父親である私の責任だというのですよ。家のことを少しも考えてくれなかった。妻の苦労を知りながら、忙しいと逃げてばかりいたからだと責めはじめたのです。」

    カウンセラー
    「息子さんの不登校の原因があなたにあると責められてしまった――それは心外だったでしょうね。」

    クライアント
    「ショックでしたよ。残業だ、出張だとほとんど家にいない父親は『父親失格だ』とまで言われたんですから。」

    カウンセラー
    「『父親失格だ』と言われたんですか。奥さんはあなたのことをわかってくれているとばかり思っていたのに、『父親失格だ』では・・・」

    クライアント
    「そうなんですよ。私は、たしかに仕事一筋できました。企業戦士というヤツでしょうか。でも、おかげで社内でも認められ、昇進も同期ではトップです。念願のマイホームだって建てて、家族だって喜んでいたんです。家族に不自由な思いをさせた覚えはないんです。」

    カウンセラー
    「経済的にもちゃんと父親の役目を果たしてきたつもりだし、奥さんは、人一倍あなたが働いていることを見てくれている、と思われていた。理解者であると思っていた奥さんに裏切られたようで、非常に落胆されたんですね。」

    クライアント
    「最近ではつくづく今までの自分の人生はいったい何だったんだろうかと考えてしまうんです。いったい何のために、こんなにがんばってきたんだろうと。」

    カウンセラー
    「報われない気持ちで、急にむなしくなってしまわれたんですね。『俺だって大変だったんだ!』と叫びたいような気持ち・・・・・・そしていったい自分の人生は何だったって・・・・・」


    この“無条件での共感的理解”が、そしてその共感的理解のプロセスが、来談者中心のカウンセリングです。
    クライアントはカタルシス効果とバディ効果を得て、やがては気づき(アウェアネス効果)によって自分自身の内的世界を正しく理解できるようになり、それを受け入れることができるようになります。そのことによって、本来自分がもっている力を取り戻し、それを発揮できるようになるのです。
    以下に紹介するカウンセリングのいくつかも、この来談者中心療法がベースになっています。
  • 認知療法 「思い込み」や「とらわれている」ことをはっきりさせ変えていく
    私たちは、さまざまな内的・外的刺激を受けると、まずそれに反応します。その刺激をどう受け取ったか、どうとらえたかはその刺激の認知の仕方によります。その認知の仕方によって、感情が引き起こされ、行動が決定されていきます。
    こうした心理現象のシステムに注目して、「認知の仕組み」そのものに働きかけ、それによって感情や行動を変えていこうとするのが、「認知療法」です。
    わかりやすくいえば、次のようになります。
    人が苦しむのは、事柄そのものによってではなく、その事柄に対する受け取り方、見方によるものです。したがって、不安や緊張などの感情の背後にある認知(受け取り方や見方)の偏りや歪みに注目していきます。その人の受け取り方や見方が、現実的か、妥当なものかを十分吟味していくわけです。
    たとえば、「太るのが怖いので食べない」と訴えているクライアントがいたとします。そんな場合には、彼女の怖い気持ちの根拠について話し合います。その人の心には「太ると嫌われる」など「太る」ことへの否定的な意味づけがありますから、そのことを見直していくのです。

集団認知行動療法(CBGT)

  • イメージ療法 心のイメージを明確にしたり願望をイメージの世界で実現する
    これは、心の中に浮かんでくるイメージを語ってもらい、それによって、悩みを解決していくのを助ける方法です。
    具体的には、2つの方法があります。
    1つは「指定イメージ法」といって、カウンセラーがイメージするものを指定したり、導いていく方法です。「上司を動物にたとえると、それはどんなイメージですか?」「どんな色、形ですか?」という具合に、進めていきます。
    対人関係がうまくいっていない、何かにとらわれて集中できない(たとえば、何かをやろうとしても隣近所の目や噂が気になってしかたない。あるいは、いつも叱責を受ける上司のことがすぐに頭に浮かんで仕事に集中できない)などストレスの対象がはっきりしている場合に用います。
    イヤだと思う原因をはっきりさせたら、クライアントが持っているイヤなイメージ、ネガティブなイメージを、別のイメージ、つまりポジティブなイメージに変えていきます。
    もう1つには、「自由イメージ法」があります。
    「いま、どんなものが心に浮かんでいますか?」「いまの気持ちを表すとしたら、どんな色ですか?」と、細かい指定はせずにクライアントに心に浮かぶままを語ってもらうやり方です。
    心の中にあるぼんやりしたものを、じっくり時間をかけて徐々に顕在化させる方法で、うつ状態の人や心身症の人にも用いられます。
    「ああ、そうか。心にあった暗い影は母親だったんだ。ミスばかりする自分を、母親がしっかり者の妹と比べて『おまえはダメなヤツだ』と思っているんじゃないかと、いつも気になっていたんだ。」
    というふうに、クライアントの心の中であいまいだったものが、だんだんはっきりしてくるわけです。
  • 交流分析 人間の性格上の偏りを知り他人との人間関係をコントロールする
    対人関係に悩む人、家族とのコミュニケーションがうまくとれない人などに、よく用いられるのが「交流分析」です。
    アメリカの精神科医エリックバーンによって1950年代中頃に提唱されたもので、その後も新たな理論が付け加えられながら発展してきました。精神分析の口語版ともいわれる心理療法です。
    内容を簡単に説明すると、自分の性格上の偏りを自己分析によって気づき、他人との人間関係を自分でうまくコントロールできるように変えていく方法です。まず「エゴグラム」という自我状態を見るテストで自分のパーソナリティの構造を理解します。これを「構造分析」と呼んでいます。これが普段のコミュニケーションや生き方そのものを変えていくきっかけにもなります。
    パーソナリティの構造分析から始めて、人とのやりとりの分析を行い、そして自分の生き方やコミュニケーションの仕方を変えていく「脚本分析」に進のが交流分析のやり方です。
  • 精神分析 潜在意識を顕在化させる
    カウンセリングといえば、すぐに「精神分析」を連想するほどオーソドックスなものといえましょう。
    従来、精神科医が行ってきたカウンセリングの代表的なものです。ご存知のように、グムント・フロイトが考え出した治療法です。フロイトは、無意識を含めた心の全体が、その人のあり方を左右し、その歪みや澱みがときとして症状というかたちをとると考えます。
    フロイトの考えの概略を紹介しますと、次のようになります。
    人間は、本来、本能のかたまりですが、成長していく過程で現実に即した理性を身につけていきます。この本能と理性をコントロールする機能が「自我」です。自我が健康に機能しているときは、人は柔軟で一貫性を持って現実に適応していくことができます。しかし、困難や危機に直面したときは、自我がパニック状態になり、無意識のうちに過去の体験を手がかりにして困難や危機を克服していこうとします。ところが、無意識のうちに手がかりにしている過去の体験がやっかいなものであると、困難や危機を乗り越えることはできず、そこにさまざまな問題が生じてきます。
    そこで、過去にさかのぼりクライアントに、無意識のうちに自分が身につけてしまった対処法に気づかせ、それを変えていく援助をするのが精神分析的カウンセリングなのです。
    ソファや寝椅子に横になってもらい、「頭に自然に浮かんできたものを言ってみてください」といった自由連想法、あるいはその人が見た夢の分析などから、その人の心の中にある抑圧や抵抗を解釈します。こうした方法で心の中に潜在化しているものを顕在化させていきます。クライアントは自分の無意識の世界を知ることで、抑圧や抵抗から解放されていくことができるのです。
    たとえば、通勤時の電車に乗ると息苦しくなり不安を感じ電車に乗ることに恐怖さえ感じる若い女性がいたとします。これは「不安障害」の1つですが精神分析では、彼女に子供時代、両親との生活、友達関係や学生時代のこと、就職してからの場面、そこで感じたことや気づいたこと、あるいは電車に乗ったときに感じる不安から思い出すことなどについて、さまざまに話してもらい電車に乗ることに恐怖を感じるようになった原因や理由を探っていきます。原因や理由がはっきりすればそれを解決することによって、直接的に不安を取り除くことができます。それができなくてもその原因や理由をクライアントに明確にさせることでアウェアネス効果が生まれ、不安がやわらぐことも多いのです。
  • ゲシュタルト療法 心と行動を一致させる
    今まであげてきたカウンセリング方法の中では、もっとも東洋的な側面をもつカウンセリング方法です。
    ゲシュタルトとはドイツ語で「全体の形」あるいは「姿」という意味です。
    この療法はフレデリック・パールズによって広げられたもので、その名とおり人間を部分ではなく全体でとらえて、カウンセリングしていこうという方法です。私たちのコミュニケーションには、言語的(言葉や文字による)コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがあります。非言語的なコミュニケーションとは、言語以外のすべてのものを含みます。たとえば、相手との物理的な距離、どんな位置で対しているか、表情や態度などのボディランゲージ、あるいは声の調子や大きさ、間の置き方などです。
    「ゲシュタルト療法」では、この非言語的な側面を重視します。つまり語られる言葉だけではなく、表情や言い方、態度などに注目します。人の本音が言葉によって伝えられるとは限っていないからです。たとえば、「今落ち着いています」と言う人が貧乏ゆすりをしていたとしたら、本当に「落ち着いている」といえるでしょうか。このように言葉で語られる内容と、非言語的なメッセージとのコントラストに目を向けて、クライアントの本音に近づいていくわけです。
    「顔で笑って心で泣く」という言葉があります。それはそれで素晴らしいことかもそれませんが、人は行動や態度と気持ちが一致しないことがあまりにも続くと、それが大きなストレスになってバランスを崩し、心とからだの不調をきたします。
    現代人に気持ちと行動の一致を求め、過去や未来ではなく現在に生きること、ありのままの自分でいることを提唱しているのが、ゲシュタルト療法といえるでしょう。
  • 行動療法 目標行動を契約で決め、それに基づいて課題や宿題をクリアする
    性格を直したい、高所恐怖症や閉所恐怖症を克服したい、自己成長ができるようになりたい異性にアプローチできるようになりたいなど、「こうなりたい」という目標がしっかりしている人に向く療法です。
    これは人間を「行動」でとらえて、その行動を学習によって変化させていこうとするカウンセリングです。私たちは小さいころからさまざまな学習をし、それを身につけ、行動をしてきました。その人がどんな行動をとるかは、その人がそれまでどんな学習をしてきたかによって決まる、と考えるのがこの療法の特色です。ですから、感情面はあまり重視されず、行動にのみスポットが当てられます。
    カウンセリングを行う場合、その人がどうなりたいのか、ということがいちばん重視されますから、初回のカウンセリング時にクライアントに目標を定めてもらい、次回からその目標を達成するための練習をしていきます。カウンセリングはすべてがそうですが、この方法では特に最初の約束−契約が大事になります。「行動療法」では契約が成立すれば、カウンセラーのやり方、指示にしたがってもらうからです。学習理論や行動科学で発見された方法を応用して課題や宿題が与えられ、それをひとつひとつクリアしていくことで目標に近づいていくのです。依存心が強い人に向く方法ではありますが、カウンセラーはその人にあった方法で問題解決と目標達成にアプローチしますから、お子さんの治療でも大丈夫です。
  • 家族療法 家族内のシステムを見直す
    不登校や引きこもり、あるいは摂食障害など、子どもや若者たちになんらかの問題出たときに有効なカウンセリングです。以前は子どもが問題や症状を引き起こすのは家族のあり方に問題がある、という家族病理的な考えで治療が行われていました。が、それではなかなか問題解決ができないということがわかり、現在の「家族療法」は考え方が変わってきました。
    家族療法というのは、次のような考えがベースになっています。
    家族は1つの小さな社会です。それぞれの家族は、それぞれ独自のシステムを(特に精神的ルール)を持っています。ですから、家族の構成員は1人1人そのシステムを維持するための役割を持っています。ですから家族の1人特に子どもが問題やある症状を示せば、それはその家族のもっているシステムそのものへの危険信号ということになります。
    わかりやすい例を上げれば、子どもが病気になれば、仕事中毒だった父親も早く帰宅するようになるでしょう。子どもが事故を起こせば、夫婦喧嘩している暇もなくなるはずです。「子はかすがい」と昔から言われてきましたが、家族システムの問題点を行動や症状で表すのが、子どもだということもできるのです。
    こう考えてくれば、個人の症状だけを取り上げて、うんぬんしても問題解決には至らないわけで、家族そのもののシステムを検討していく必要が出てくるのです。
    家族療法では、症状を出す人をIP(Identified Patient−アイデンティファイドペイシェント)と呼びます。つまり「患者とされている人」「問題とされている人」です。しかし、「問題とされている人」がいるというときは、必ず、それを「問題とする人」がいるはずです。つまり「おまえが問題だ」という人、「あなたが犯人だ」という人です。それは父親だったり、母親だったりします。
    そしてIPに聞くと、「俺は犯人じゃない。あんた(父親、母親、あるいはそのほかの家族)が問題だろう。あんたが変わってくれればいいんだ」となることが多いのです。
    ですから問題が多くなってきます。
    もちろん家族間で話し合いが行われ、そこで解決できればカウンセリングの必要はありません。が、問題がこじれている場合は本人同士では解決も相談すらもなかなかスムーズにはいきません。第3者−カウンセラーが入って、家族関係に焦点をあわせる必要が出てくるのです。
    まず、家族内にどんなシステムができあがっているのか、それは家族1人1人にどんな影響を与えているのかを調べます。家族のシステムが悪循環に陥っている原因を調べ、家族間のルールがスムーズに循環し、コミュニケーションがうまくとれるように変えていきます。具体的なは、何か課題を与えたり、ロールプレイ(役割技法といって、父親が息子の役割をやったり、カウンセラーが父親の役割をやったりして、役割をとりかえて相手の立場を理解すること)をやったり、交流分析を用いたり、ゲシュタルト療法のワークをしたり、家族の見ている前でカウンセラー同士がその家族の問題点や素晴らしいところをあげて議論したりします。
    たとえば、夫婦間のコミュニケーションがうまくとれず、子どもの問題でいつも対立し、父親がひどくしかってしまう夫婦がいたとします。ご主人に「奥さんが子どもさんに何か言ったときは、必ず奥さんをしかってください」といった宿題を出します。これは逆説を用いた宿題です。“叱ること”が義務や仕事になると、人はそれがイヤになったり、バカバカしくなってきたりするものです。こうして、“叱ること”を無意識から意識化させることで、その無意味さに気づかせ、悪循環を断ち切らせるのです。
    ちなみに、子どもは「かすがい」の役目はありますが、逆に子どもが「くさびを打ち込む」役割をすることもあります。家庭内離婚状態にあった夫婦の子どもが症状を出したことで、夫婦が向き合って話しあう機会を得て、その結果「家庭内離婚より実際に離婚したほうがいい」という結論になったケースもあります。要は、悪循環のシステムを断ち切って、家族1人1人が幸福になることですから、家族が到達する結論はさまざまなのです。
  • グループカウンセリング 体験の発表、意見交換、ロールプレイで問題解決
    個人ではなく、集団で行われるカウンセリングです。
    同じ悩みをもつ人たちが集まり、自分の悩みや体験を発表したり、意見交換をしたり、カウンセラーの指示にしたがってロールプレイなどを行う中で、問題解決をはかっていこうとするものです。
    「グループカウンセリング」には、薬物やアルコール依存症の人の集まり、エイズキャリアの人の集まり、子どもの問題で悩む父親あるいは母親の集まり、人間関係が不得手な人の集まり、阪神大震災でストレスを持った人たちの集まりなど、種々のものがあります。このカウンセリング方法は、同じ悩みをもつ人、同じ立場に立つ人たちが集まり、体験談を話したり、聞いたり、意見交換をしたりすることによって、「自分だけが悩んでいるのではない」「同じように苦しんでいる人がいる」と互いに仲間意識が持てるようになり、それによってやすらぎと励ましが得られる−つまりバディ効果が得られることがもっとも大きな特徴です。(アウェアネス効果)も得ることができます。
    アメリカでも盛んなカウンセリングの方法ですが、集団が苦手という人、あるいは自分の気持ちをしっかり受け止めてほしいという人には、グループカウンセリングはあまり向かないかもしれません。
    とはいえ、比較的大きな集団でカウンセリングを行う場合でも、3〜5人といった小さなグループに分け、そこで話し合いをしてもらうなどの方法もとりますから、内気な人でも十分溶け込むことができます。
    ただし、初めからいきなりグループカウンセリングに入るより、初回はカウンセラーと個人面接してから行ったほうが何かとスムーズなようです。
 
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