以下に、認知行動療法の基本的な理論をいくつか説明します。
1:認知的機能主義
人間の心を科学する「心理学」には、その見る視点によって様々な人間理解(心、行動など)をしていこうとする理論や立場があります。認知的機能主義もその一つです。これは人間の行動は、外界からの「刺激」に対する反応としての「行動」の間に、『認知(考え)』があるという想定を新たに導入し、外界から刺激を受けたとき、それをどのようにその刺激を受けた人が捉えるか(考えるか)によってその人の行動が様々に影響を受けると考える立場なのです。

2:情報処理モデル
これは、「心理的苦痛を感じている間、人の考えはより硬直化して歪んだものとなりやすく、判断はより一般化されて絶対的になりやすく、自分や他人、または世界に対する基本的な信念は固定化されやすい」( Weishaar,1996 )というものです。よく耳にする「白黒思考」「べき思考」といった考えのくせは、調子が悪いときに強く出てくるものですよ、ということを示してもいるのです。以下に、いくつかのくせの例を書いておきます。
[考えのくせの例]
恣意的推論
Arbitrary inference
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根拠もなく、他人の心を読みすぎたり、将来のことを先読みしすぎたりして、事実から飛躍した悲観的な結論を出してしまう。 |
分極化(白黒)思考
Dichotomous thinking
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極端な考えをだけで、バランスとの取れた考えを認めない。
All or nothing の考え方。
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マイナス化思考
Disqualifying the positive
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良い出来事や日常の何でもない出来事を、悪い出来事だと解釈する。 |
感情的決めつけ
Emotional reasoning
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自分の「感情」を根拠に状況判断する。うつ状態では否定的な感情に支配され、否定的な結論ばかり出てしまう。 |
自己関連づけ
Personalization
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よくない出来事を、根拠なく自分のせいとする考え方。 |
べき思考
Should statements
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過度に「〜しなくてはいけない、〜すべき」と考え、自分を追い込む考え方。 |
( 誤った ) レッテル貼り
(mis)labeling
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歪んだ認知によって、否定的な自己イメージを作りあげる。
→「遅刻した=自分はだめな人間だ」
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誇大視・微小視
Magnification/minimization
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短所や失敗を拡大解釈する一方、長所や成功を過小評価してしまう。 |
3:スキーマ(中核信念)理論
前述した認知的機能主義は「人間の気分は、その人が状況をどう捉えるかによって決まる」という仮説です。スキーマ理論は、人がその状況においてなぜそのような考えを持つのか、に焦点を当てます。考えは「このような考えを持とう」と決めてから出てくるのではなく、勝手に自動的に出てきます。ゆえに、この自動的に出てくる考えを『自動思考』と呼んでいます。そして、自動思考をよく観察してみると、同じような考えが出てきていることに気がつくかもしれません。
例えば、 A さんは仕事で失敗したときには「やっぱり私はダメなんだ・・・」といった考えが自動的に出てきます。一方 A さんは、成功して人から褒められたときには、「どうせ次はダメになるに違いない・・・」といった考えが出てきてしまっていることに気がつきました。この 2 つの異なった状況において、なぜ似た考えが出てくるのかを説明しているのが、スキーマ理論です。
この A さんの場合には、自動思考の奥に、「私はダメな人間である」という強い否定的なスキーマ(中核信念)があり、このスキーマ(信念)が活性化しているとどのような状況に自分がいたとしても、自分を「ダメ」な存在としてみなすように考えてしまうのです。しばしばこのスキーマ(中核信念)は、「自分(自分ってどんな人)」「人(世の中の人ってどんな人)」「社会(社会とはどのようなもの)」に対しての自らの強い考えを示しています。
その他、スキーマ理論においては各人の思い込みのようなルール、といった信念ほど強いものではないものも仮定しています。
4:思考・感情・行動・身体的反応・環境の相互作用
認知行動療法とは、誰もが持っている考えや行動に焦点を当て、困った問題と思っている事柄や状況に対して対応をしていくアプローチです。

認知行動療法では、左の図のように人を捉えます。ある状況において浮かんでくる考え、その状況でとっている行動、その時の体の感覚、そしてその状況における気分(感情)です。
どれか一つが変わるだけでも、他のものも変わっていきます。同じ状況でも疲れている時と元気な時には違った考えが出てくるものですし、いつもと違った行動をとってみることで気分が変わるということを体験したこともあるのではないでしょうか。
自分の中の感覚の相互作用「個人内相互作用」と自分と外界の関係「社会的相互作用」の二つの相互作用に注目しているのです。 |